交通違反 会社 報告 プライベート
1. 勤務中の交通事故、交通違反か? まず、交通事故、交通違反で解雇などの重い処分となった場合、「その事故が勤務中に起こったものかどうか?」というポイントを真っ先に検討してください。
勤務中の交通事故であるか、プライベートの交通事故であるかによって、懲戒解雇、懲戒処分を判断するルールが異なるからです。
1. 1. 新型コロナワクチン接種強制について。 - 弁護士ドットコム 労働. 私生活は、懲戒解雇の対象とならないのが原則
冒頭で解説しましたとおり、使用者(会社)が労働者(従業員)に対して命令できるのは、業務時間中のみであるのが原則です。
したがって、私生活上の行為、プライベートの行為は、たとえ交通事故、交通違反であっても、懲戒解雇や懲戒処分の対象とはならないのが原則的なルールです。
交通事故、交通違反は、誰でも起こしてしまう可能性のあるもので、生活に常にとなりあっています。
そのため、交通事故、交通違反を私生活で起こしてしまったとしても、そのことだけで、懲戒解雇や懲戒処分になるわけではありません。
ただし、民事事件における損害賠償の対象となったり、行政罰(罰金)の対象となるほか、重大な交通事故の場合、刑事罰の対象となりますので注意が必要です。
1. 2. 私生活上の行為でも懲戒解雇になるケース
私生活上の行為は、懲戒解雇、懲戒処分の対象とならないのが原則であるということをご理解ください。
しかしながら一方で、「プライベートだから何をしても良い。」というわけではありません。私生活上の行為であっても、懲戒解雇、懲戒処分の対象となる場合もあります。
プライベートの行為であったとしても、会社の業務に支障を与える場合、懲戒解雇、懲戒処分の対象となり得ます。
たとえば、会社の業務に与える支障が大きい例として、次の例をご覧ください。
例 バス運転手として勤務していた労働者(従業員)が、会社の業務外で、飲酒運転をして交通事故を起こしてしまいました。
その結果、会社名が新聞、テレビ、ラジオで報道され、さらにインターネット上でも情報が拡散してしまいました。
ちょうどそのバス会社では「交通事故安全キャンペーン」「飲酒運転撲滅週間」を実行していたことから、会社の社会的評価は大きく下落することとなりました。
この例を見てもおわかりいただけるとおり、運転を会社の仕事として行っている、いわゆるプロの運転手の場合、プライベートの行為であっても、より厳しい会社の処分が予想されます。
運転のプロであるほど、いざ私生活で交通事故、交通違反を起こしてしまったときに、会社に与えるダメージが、より大きいといえるからです。
2.
新型コロナワクチン接種強制について。 - 弁護士ドットコム 労働
従業員の交通事故に伴う会社の責任
従業員が起こした交通事故に対して会社は賠償責任を取らないといけない場合があります。
それは「従業員の交通事故という不法行為責任(民法第709条)」に対する「使用者責任(民法第715条)」が発生したり、「運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)」が発生したりするときです。
それぞれのどのような責任か以下に見ていきましょう。
賠償責任の根拠となる法律 1. 「使用者責任」
「 使用者責任 」は被用者の不法行為に対して発生する責任です。民法第715条で以下のように定められています。
民法第715条
1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
この条文は簡単に言うと、
「使用者は被用者に業務をさせる以上、その業務をきちんと指導・監督する責任があります。 今回起こった被用者の不法行為に対して、使用者としての責任を果たしましたか? 果たしていなければ賠償責任が出てきますよ」
ということです。
これを交通事故にあてはめて考えていくと、使用者(会社)あるいは監督者(管理責任者)は被用者(従業員)が勤務中(事業の執行中)に交通事故を起こし誰かに損害を与えた場合、賠償する責任があることを明記しています。
一方で、会社や管理責任者はその責任を取らなくてもよいケースがあることも示しています。
それは車を使って行うその業務について、その従業員に適性があることをあらかじめ確認した上でお願いして、その業務をしてもらうに際して、その従業員にきちんと指導・監督していたことが認められる場合です。
また、従業員の交通事故に対する賠償金を会社が支払った場合、従業員に対して後でその返済を求める権利(求償権)が保障されています。
賠償責任の根拠となる法律 2.
懲戒解雇は制限されている! 以上の検討のとおり、原則として、懲戒解雇の対象となるのは、勤務中の行為と、私生活上の行為のうちのごく例外的な部分であるということをご理解ください。
その上で、労働者(従業員)が起こしてしまった交通事故、交通違反が、懲戒解雇、懲戒処分の対象になる場合であっても、まだあきらめてはいけません。
というのも、懲戒解雇、懲戒処分には、労働法の法律、裁判例で、高いハードルが設定されているからです。
会社が、労働法の法律、裁判例に関する知識なく、いい加減な考えで懲戒解雇としてしまった場合、労働審判や裁判で、その無効を争うことが可能な場合もあります。
交通事故、交通違反を理由として、懲戒解雇となってしまった場合に、労働法で必要とされるハードルについて、弁護士が順番に解説していきます。
2. 懲戒解雇のルールが定められている? 懲戒解雇を行うためには、その理由と処分の内容が、就業規則に明確に記載されていなければなりません。
交通事故、交通違反を理由として懲戒解雇されてしまった場合、まずは就業規則を確認し、就業規則に書いてあることからして、「交通事故、交通違反の場合に懲戒解雇することができるのかどうか。」を検討してください。
たとえば、懲戒処分が、懲戒解雇、出勤停止、けん責など、懲戒処分の種類ごとに理由が定められている場合には、自分に下された処分の理由が、就業規則に書いてあるかどうかを確かめるようにしてください。
次のような場合、今回の交通事故、交通違反に対して、懲戒処分、懲戒解雇自体ができない可能性もあります。
会社に就業規則がなく、雇用契約書にも懲戒解雇についての記載がない。
会社に就業規則はあるが、労働者に周知されていない。
会社に就業規則はあるが、懲戒解雇に関する記載が全くない。
会社に就業規則があり、懲戒解雇に関する記載があるが、交通事故、交通違反を理由とできるような具体的な記載が全くない。
なお、懲戒解雇にする場合、その懲戒解雇の時点で、これらのルールを定めた就業規則があることが必要となります。
交通事故、交通違反を受けて、あわてて作成された就業規則は、懲戒解雇の根拠とすることはできません。
2. 定められた懲戒理由にあてはまる? 以上のとおり、懲戒解雇とするためには、懲戒解雇の理由とその内容とが、就業規則に定められていなければなりません。
その上でさらに、今回おこしてしまった交通事故、交通違反が、その懲戒解雇の理由と内容に、あてはまっていなければなりません。
形式的には懲戒解雇の理由にあてはまる場合であっても、会社がやめさせたいと考える労働者(従業員)を、交通事故を言い訳にして解雇してしまうというケースも少なくありません。
次の観点から、解雇理由が、本当に就業規則のルールにあてはまっているかどうか、再度検討してみてください。
重要 相当期間前の交通事故を、何らかの理由に対する報復として、突然懲戒解雇の理由としていないかどうか。
他の労働者(従業員)の同程度の交通事故、交通違反よりも厳しい懲戒処分となっていないかどうか。
交通事故、交通違反以外に、解雇にしたい理由が他にあるのではないかどうか。
2.