自 閉 症 女の子 ブログ
光武: そのうえ、「使う時間に意味を見出せるか」「自分が納得しているか」を基準に働くことが世の中の当たり前で、賃金をもらうことより大切だと思っていたんです。だから、そうではない考え方の人に対して攻撃的な態度をとってしまって、対立することも多かったんです。 利益を優先して商業主義的なスタンスで働く先輩 に「なんで先輩はそんなバカなのに、勉強しないんですか?」って本気で尋ねて、怒られたこともありました。 ──かなりアウトローな感じですね(笑)。 光武: 当時は「世の中バカばっかりだ」って本気で思っていましたからね(笑)。だから、先輩がなんで怒るのかも理解できなかったんですよ。でもその反面、仕事が減って先の見通しは不安になるし、自信もどんどん失って。それにより発達障害の特性が強く出てしまい、妻との関係も悪化していくという悪循環でした。 ──当時はどのような状況だったのでしょうか? 光武: ADHDの症状である「衝動性」が強く出てしまうと、じっとしていることが出来ず、眠れないため、夜中も妻の横で仕事をしてしまったり……。それと自分のなかにある優先順位をうまく他人に合わせることができなくて、夫婦で家事を分担するといったことも苦手で、例えば部屋の片付けといったことも妻だけへの負担となってしまったりしていました。 ──最初におっしゃった「仕事もプライベートもボロボロ」の時期ですね。 光武: ええ。 それでも自分が発達障害だなんてかけらも思っていなかったのですが、病院ですべて当てはまってしまったチェックリストを見て、ようやく少し自覚が芽生えてきた感じです。 発想を変えたら、ミスもストレスも格段に減った ──心療内科ではどのような検査をされたんですか? 光武: まずはチェックリストやカウンセリングで僕の傾向を割り出し、衝動性を抑える薬を試してみることになりました。それを服用してみたら劇的に変わったので、医師から「ADHDという診断が妥当」と言われました。その後「WAIS-Ⅲ(※16歳以上の成人用に標準化された、ウェクスラー式の知能(IQ)を測るための一般的な検査)」を受けて、特性を調べていったという感じです。 ──発達障害とわかったときのお気持ちは? 光武: 自分に「障害」という名前がついたことはショックでした。WAIS-Ⅲのグラフのデコボコした結果を見て、人とどこが違っているかは自覚できるようになったのですが、すると今度は、そうした特性を理解せずに自分を排除しようとした環境や、発達障害とわかっても対応を変えようとしない妻の態度にイライラしたり。 ──どのくらいそのような状況が続いたのでしょうか?
スタッフほぼ全員が発達障害の当事者のバー ここ数年で広く知られるようになった「発達障害」。 挙げられる特徴は多岐にわたるものの、コミュニケーションがうまくはかれなかったり、タスク管理が苦手だったりと、対人関係や仕事の場面で苦労する人も多いといいます。 「もしかしたら、自分もそうかも」と感じている人も少なくないようですね。 そんな悩みを抱えた人たちのコミュニティーとなっているのが、 渋谷 にある「 発達障害BAR The BRATs 」。 木曜日~土曜日の週3回のみオープンするカフェバーで、スタッフもほぼ全員が発達障害の当事者です。 このお店のオーナーの 光武克 さんは、3年ほど前に ADHD (注意欠如・多動性障害)と ASD (自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群)との診断を受けたとのこと。 これまで数多の困難に直面してきたそうですが、今は発達障害とうまく付き合いながら日々を過ごしていると言います。そこで、お店の様子から、特性の受け止め方や発達障害と向き合うコツまで、いろいろとお話を聞いてみました。 仕事やプライベートがボロボロのとき、発達障害と診断された ──発達障害に特化したお店を開こうと思ったのはどうしてですか? 光武: 同じような悩みを抱える人たちが気楽に集える場をつくりたいと思ったからです。僕が発達障害の診断を受けたのは、 仕事もプライベートもボロボロのとき でした。 ほかの当事者が問題にどうアプローチしているかを知りたくて、 自助グループのような コミュニティーに参加してみたのですが、状況報告みたいな話がメインで、解決の足掛かりを得られる感じではなかったんですよね。 僕のようにケーススタディを求めている当事者はかなりいるはずなのに、そういう場が意外と少ないことがわかって、それなら僕がつくろうかなって。 ──ではなぜ、ただのコミュニティーではなくバーというスタイルに? 光武: シリアスに悩みを打ち明け合うような雰囲気ではなく、仕事帰りにふらっと立ち寄って、その日の出来事やちょっとした悩みも吐露できるようなフランクな場にしたかったんです。 そこにお酒があれば会話も雰囲気もフランクになるだろうし、僕が仕事や家庭の問題を友達に相談するとしてもお酒を飲みながらだよなって思ったので、「お酒を飲む」というのも大切なポイントだと感じました。 ──お酒が入ることで話しやすくなることもありますもんね。 光武: とはいえ、自助グループのような場でお酒が出ると違和感があるじゃないですか。それで、お酒が出ることが前提のコミュニティーなら自然に飲めるかなとか、総合的に考えたらバーが一番ふさわしいと思ったんです。 ──未経験でいきなりバーの経営とは、思い切りましたね。 光武: 離婚して「好きなことをしてみよう」という気持ちになったタイミングだったので(笑)。ただ、バーというのはカタチで、あくまでもコミュニティーづくりを軸にしたいと考えているので、自分ができる範囲でやっています。 だから看板メニューもないのですが、 3, 500円の定額制 (ノンアルコールは2, 500円/ともに税込)で飲み放題、食べものは軽食程度であれば持ち込みOKと、かなり自由です。 生活が破綻する一歩手前の時期もあった ──実際にお店をオープンして感じたことはありますか?