「芸大卒のオペラ歌手は使いづらい」という現場の声|山野 靖博(ぷりっつさん)|Note
声楽の才能とはどういったものですか? 声楽というだけではなかなか広いですが、適性かそうでないかの違いはなんですか??
声楽家はカラオケが苦手!? クラシックとポップスの発声法の違いとは | Cosmusica (コスムジカ) クラシックをもっと身近に感じてもらうためのコラムライブラリー
そうですね。まずは、時間を大切にしてほしいです。学生はこの学べる環境や、若い 「今」が、ずっと続くと思っているように感じます。いつでもできるから、「今」やらなくてもいい。と考えてしまう。もちろん全員ではありません。でも、恵まれた環境にある「今」は続かないし、「今」しかできないことがあるんです。留学も私の頃よりずっと身近になりましたが、その分、恵まれた時間を大切にしていないと感じることがありますね。 それと、もう一つ伝えたいこととして、「見極めが肝心だ」ということです。例えば、「ヨーロッパに行って個人レッスンを受けて、なんとなく何十年も経ってしまった」ということがあります。そうなる前に、見極めて、違う方向を向いて欲しいんです。諦めるとは違います。ここまで努力したならば、次の展開を考えようと方向転換するんです。 ただ、この狭き門の東京藝術大学に入学した方には違う方向を向くのは辛い選択でもあり、勇気がいることではありませんか?
すごく緊張するはずだったんですけど。オペラ公演はモーツァルト作曲の「後宮からの逃走」で、私はラクダに乗りながら登場することになっていました。リハーサルの時は、フタコブラクダは従順でしたし、乗り降りの練習もして、なんの問題もなかったのです。ですが、本番はラクダに乗って舞台に何とか出たのですが、ラクダの方が緊張してしまったのか、綱を引く人の言うことも聞かず、ぐるぐるぐるぐると舞台を歩き回ってしまい、私は降りるに降りられない。ラクダが止まらないのですから。次の場面になって合唱隊が舞台に登場したときに、ラクダが合唱隊とぶつかり、ラクダが一瞬に止まったところで、「今だ!飛び降りろ!」と言う声が聞こえ、ラクダの上から夢中で飛び降りました。その後、ラクダにつかまっていた手が固くなってしまっていて、そちらに気を取られながらも、セリフを言い、歌を歌い切りました。 かなり高いところから夢中で飛び降りて、歌う、大変ドラマチックなデビューでしたね!衣装だって舞台用のドレスだったのではないですか? 夢中で飛び降りました(笑)。衣装はズボンに巻きスカートでしたので、それは問題な かったですね。次の公演でも暴れ、結局ラクダは、くびになっていました。そんな初演でしたから緊張はしませんでしたね。 大変な初演でしたね。くびになったのが先生じゃなくてよかったわ(笑)。 それぞれに自分の人生を見つめ、自分軸で考える ヨーロッパで活躍された後、大学教員になって学生を指導する立場になりましたが、今までの話の流れから考えると、そういう目標があった訳ではないのでしょう? はい。全く(笑)。自分が教員になるとは考えてもいませんでした。いつも、仕事をいただくときは「私で本当にいいんですか」と聞きます。演奏家になる時もそうでしたが、それを目指していた訳ではないんです。ですから、足りないところが沢山あることは自分が一番よくわかっているんです。そして、お仕事を引き受けたら、足りない部分は足りない部分として認識して、一生懸命やります。 大学教員になってからは、教員としての仕事と演奏活動が重なれば、迷わず教員としての仕事を選びます。教員としての本務があるのですから、そちらが優先です。そういった縛りの中で、演奏活動をします。それでも仕事が回らなくなれば、自分の時間を削って対応します。それが自分の与えられた役割だと思っています。 学生を指導する立場になられて、学生に対してどのような印象をお持ちですか?どんなことを伝えたいとの想いが強いのでしょうか?