【感想】理由の分かる恐怖 「などらきの首」 澤村伊智 - 積みは快楽だ 社会人編
内容 学校は死の匂い 雨の日に体育館で飛び降り自殺をする白い人影のうわさを確かめる。 悲鳴 映画サークルの大学生が殺人事件のうわさのある場所で映画をとることに。その後次々と奇怪な事件が発生する。 などらきの首 首を失った化け物が首を捜しているという言い伝えのある村で、少年のころ首が封じられているという洞窟に忍び込んだ恐怖の記憶が蘇るが・・・ 感想 理由が分かるのに、理由が分かるから怖い。そういう恐怖を扱った作品が多い。ミステリの手法を使って書かれていて、「推理」が披露され一応の解釈を得られる。ただし全く事件の解決にならないのが、ミステリ読みには嬉しい悲鳴です。中でも表題作の推理と解決は良い。 ミステリとホラーに二股かけてる人におすすめ。 短編なのでどれもテンポ良く進みテンポ良く人が死ぬのも楽しい。おっここで死んじゃうかーうふふ、って感じ。 ただ、「ぼぎわん」や「ずうのめ」といった長編とくらべると少しパンチが弱いかな。(あいつらバケモノ級のバケモノが異常なだけではあるが)
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『生きている腸』のゾッとする結末とは? 吹矢が8日ぶりに帰宅すると、なぜかまだチコの砂糖水は半分も残っていました。そればかりでなく、部屋に 女の体臭 がするような気がします。戸惑う吹矢の首元に、突如ステッキ状のものが奇妙な声をあげて飛びかかりました。そして、それは 彼の首を締め上げ、殺してしまいます 。 実は、その腸は死刑囚のものではなく、刑務病院の若い交換手の女性のものでした。外科長は彼女の盲腸の手術に失敗したことを隠すため、その腸を取り出して吹矢に譲り渡していたのです。 腸は、吹矢のことを一途に愛していました。彼に飛びかかったときも、主人が帰宅したことが嬉しくなり、抱きついたつもりだったのです。 吹矢の悲惨な死は誰にも知られず、ただ外科長がひっそりとそれを喜ぶのみでした……。 4. 多感な少女と、昔話の因縁──『 魚服記 ぎょふくき 』 山の中の炭焼き小屋に住む娘・スワ。彼女は、父から聞いた 馬禿山 まはげやま の滝にまつわる昔話を信じ、大人へと成長していく。 『魚服記』 は、 太宰治 の最初の創作集『晩年』に収められた短編小説です。この物語の舞台は、太宰の生まれ故郷である青森県・津軽。『魚服記』では、津軽の山奥の小屋で暮らす多感な少女・スワの生活が描かれます。 スワはある日、父から聞かされた、家のそばにある滝にまつわる昔話のことを思い出します。その話は、こんな内容でした。 三郎と八郎というきこりの兄弟があって、弟の八郎が或る日、谷川でやまべというさかなを取って家へ持って来たが、兄の三郎がまだ山からかえらぬうちに、其のさかなをまず一匹焼いてたべた。食ってみるとおいしかった。二匹三匹とたべてもやめられないで、とうとうみんな食ってしまった。 そうするとのどが乾いて乾いてたまらなくなった。井戸の水をすっかりのんで了って、村はずれの川端へ走って行って、又水をのんだ。のんでるうちに、体中へぶつぶつと鱗が吹き出た。三郎があとからかけつけた時には、八郎はおそろしい大蛇になって川を泳いでいた。 父が炭を村に売りに行くようになり、家を空けることが多くなった冬、スワはひとり炉端で寝てしまいます。すると、酒臭い匂いとともに、誰かが家に入ってくる気配がして……。 ネタバレ御免! 『魚服記』のゾッとする結末とは? スワは、目を覚ますと、体にしびれるような痛みを感じました。彼女はそのまま外へ走っていって、「おど!」(お父)と低く叫び、滝に飛び込んでしまいます。物語は、以下のような彼女の独白で終わります。 ははあ水の底だな、とわかると、やたらむしょうにすっきりした。さっぱりした。 ふと、両脚をのばしたら、すすと前へ音もなく進んだ。鼻がしらがあやうく岸の岩角へぶっつかろうとした。 大蛇!
それを実験している様子をひとまとめで読める というのは、 大変興味深いものです。 キャラ物としての本作 作品自体の面白さ、 それに加えて、 バリエーションの面白もあります。 そして本書には、 「比嘉姉妹」シリーズものとして、 キャラクターを色々と使える、 これも実験している印象があります。 怪異に遭遇する(巻き込まれる)役の「野崎」、 怪異と対峙する役の「真琴」、 ジョーカーとして「琴子」が配置されています。 真琴で解決が無理な事件は、 『聖闘士星矢』のフェニックス一輝みたいな感じで琴子が出て来るのかもしれません。 『ぼぎわんが、来る』の様に、 今後もそういう感じで進んでいくのかもしれませんし、 一方で、そういう読者の予想をクライマックスで裏切った、 『ずうのめ人形』みたいな作品もあり、 それを二作目に書いたのは絶妙だと、今なら言えます。 いずれにしても、 キャラクターを描く事で、今後このシリーズでどれだけの事が出来るのか? その事を探りつつ、 世界観と愛着を拡げる作品集とも、 本作は言えるでしょう。 ちょっと言わせて、本書の表紙 私が本屋で本書を探した時、 中々見つけられませんでした。 何せ、前二作(『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』)の印象があったもので、 まさか、 こんな 味もそっけも無い、 文字だけの表紙なんて、思いもしませんでした 。 前二作の文庫版の表紙は、 往年の角川ホラー文庫を彷彿とさせる、 ちょっと意味が分からない感じの独特の雰囲気が出ていて好きでした。 今回は文字だけって、、、 一緒に並べても、 統一感がないでしょ! 映画の公開に併せ、 表紙でイメージを固定するより、 文字のみで先入観を排除したのかもしれません。 電子書籍を推進しない現在の状況で、 紙の本を買わせたいと思うのなら、 そういう、 「本を買う人間の心理」 みたいな物を考えて欲しい と思いました。 多彩なホラーのバリエーションを描きつつ、 それぞれにオチを用意し、短篇としての面白さを描いた作品集である、『などらきの首』。 キャラクターを描く事がマイナスにならず、 物語を有効に書く役回りも担っています。 今後も、 「比嘉姉妹」のシリーズが続くのか? それとも、 新しいホラーの境地を目指すのか? 『ぼぎわんが、来る』の映画化で、 今後ますます注目される、それだけは、間違い無いでしょうし、 その期待に添う作品が、今後も読めればと思います。 『ぼぎわんが、来る』はコチラのページ 『ずうのめ人形』はコチラのページ にてそれぞれ語っております。 * 書籍の2018年紹介作品の一覧を コチラのページ にてまとめています 。 スポンサーリンク